Lecture 5:
花と花器のバランス
Lecture Content
いよいよお花を生けていただきます。
まずお花を生ける時の、お花と花器のバランスです。
①一番高い枝「真」から生けていきます。
「真」の長さは、
・水盤の場合(平たい花器):水盤の直径×1.5+深さ(高さ)
・高さのある花器:花器の高さ×1.5+直径
②「副」の長さは「真」の約2/3〜3/4
③「体」の長さは「真」の約1/3〜1/2
です。
しかし実際にお花を目の前にしますと、お花の咲き具合、また葉の茂り具合、テクスチャ、色などによって印象が随分変わってきます。こちらの場合は基本として頭に入れておかれると良いでしょう。皆様が「美しいな」と思うままに、表現しやすいように微調整されることがとても大事です。それがお花と皆様が作り上げる「いけばな」です。
一番大事なことは、お花をよく見ていただくことです。いけばなの場合には、切り花・生きている花を使っていますので、お花との出会いも1度きりです。お花を生かすのが「いけばな」です。
お花の表情をよく見てあげてください。上を見ているもの、横を見ているもの、ちょっとうなだれているもの。色んな表情があります。いけている人の気持ちかもしれませんが、嬉しそうなお花、控えめなお花。様々です!
それから、一番印象に残るお花。「面白い!」「これかわいい!」
あなたが一番心に残るお花。私はそのようなお花を「語りかけてくるお花」と呼んでいます。そのような語りかけてくるお花を中心に、お花が生きるように、他のお花や枝を生けていきます。
よく見るというのは、どの向きが一番美しい角度。また長さかを見つけてあげることです。
皆様はお写真を撮る時に色んなポーズを取りますね。それと同じです。お花も全部正面を向いて、気を付けをしているとちょっと動きがないかもしれません。
もし皆様がお客様をお迎えする場合には、その「ようこそ」の気持ちをお花に込めて、また自分で楽しむ場合でも、何か思いを持って生けていくこともとても大事なことです。
いけばなは皆様の表現でもあります。お花と一緒に作り上げていきます。出会えたお花の美しさや個性を発見するひとときを、じっくりと楽しんでください。私はこの時間を、心が落ち着く、まるでメディテーションのようだと思っています。
いけばなを買ってねビューティフル・メディテーションと名付けています。
お花と向き合う時間、自分と向き合う時間。
花を生ける前に、お花と向き合う時間は自分と向き合う時間にもなっています。どうぞ大切にしてください。五感を使いましょう。
お花は食べることはできません。しかしよく見て、そして触れて、匂いを嗅いで。もしかするとお花の囁きも聞こえてくるかもしれません。身体全体でお楽しみください。
このひとときが、日常の全てを忘れさせてくれます。
お花を生ける時に最も大事なことは、お花との出会いも1度きりということです。
お花は枯れてしまいます。また蕾は開きます。その花の一番美しいところを見つけてあげる。そうして生けるというのが、いけばなではないかと思います。こちらにある二輪のバラ。どちらも黄色ですが、表情が違いますね。どっちが美しいと思うかはそれぞれの感性です。
そしてこのバラも、よく見ていただくと茎が曲がっています。
こちらもちょっと曲がっていますが、カーブが違います。このような小さな違いをよく見つけて生けています。
では、どうやって生けるか。近くで見たり、遠くで見たり、そしてクルクルと回していただきます。そうするとお花にも違った表情があることが分かりいただけます。
こちらが皆様から見て後ろです。背中。正面。
こちらのバラも、やはりくるくると回していただきますと、お花が一番きれいに見える角度があると思います。近くで見る、遠くで見ることで、この茎の曲がりなどもよく見えてきます。
そして、それぞれどのように生けるか、というのがいけばなです。このお花と他に緑の葉っぱや、えら、そして小さなお花…色んな形を合わせてひとつの世界を作ります。それがいけばなです。よく見てというのは、姿形。葉っぱもそうです。
美しい葉も花の一部ですので、生花の場合には全部取ったりするということはありません。生命力を感じるのはこういうところです。
このように観察する時間をとても楽しんでいます。私はこれを Beautiful meditation と呼んでいます。美しいものに触れると、心が落ち着いてくる。
以上のことに気をつけて、お花生けていただくと良いと思います。
とてもいい香りのする花に出会うこともあれば、同じ花でも香りのないものもあります。そんな風に楽しむ時間を十分にとっていただくことが重要です。
「綺麗だな」「可愛いな」「面白いな」そういった気持ちが、美しい花を作っていきます。