Lecture 2:

ビジネス統計学の狙い

Instructor: 堅田 洋資

Lecture Content


ビジネス統計学入門の講座を始めます。


第一章:ビジネス統計学の狙い

この章で学ぶことは大きく2点あります。

・一般的な統計学の概念を理解すること。

・ビジネスにおける統計学の役割を理解すること。

まず、そもそも統計学とはどういった学問なのか、このことについてお話ししたいと思います。

そもそも統計学は、 人口・国家・社会といったそもそも数え切れないような調査対象があることが前提になっています。その数え切れないほどの調査対象、これを母集団として、そこからランダムにサンプルをピックアップする。そしてそのサンプルを調査して様々な統計量を出すことで、母集団が一体どんな傾向や性質を持っているのか、このことを理解する。そういったことが統計学の基本的な考え方になっています。

重要なポイントとしては、母集団・数え切れないほどの調査対象があるということが前提になっています。そして今、自分の手元にあるデータはあくまでサンプルだというような認識が必要になります。なのでサンプルを繰り返した時に異なるデータが出てこようと、そのばらつき度合いというものをどのように評価していくのか。こういったことが統計学の重要な考え方になります。

一般的な統計学の役割としては、推計する・比較する・予測する。合わせて三点の大きな役割があると考えましょう。

まず「推計する」ですが、ビジネスにおける例として、商品の購入意向を5点満点で評価してもらってアンケートを受ける。そしてデータの平均を求める。そしてWebサイトのクリック率。何人訪れたので何クリックあったという率を求める。このようなものを推計といいます。

しかし「日本人全員を調べると非常にコストかかるので、代表として100名にアンケートを取る」ということは一種の「推定」だと言えます。webサイトも色んな期間でクリック率求めているわけではないと思いますのでそういった意味でもです。


そして「比較する」です。300人に商品Aと、商品Bの購買意欲を回答してもらい、どちらの商品が購入意欲が高いかを結論づける。新商品を考えていた時にどちらの方が購買意欲が高いかを比較してますので、比較するといったところに該当する。そして一般的にはABテストという風に言われるものですが、A案とB案の2種類のウェブサイトを作り、ランダムに表示させて、どちらの案の方がクリック率が高まるかを結論づける、という例が挙げられます。 


そして最後「予測する」です。

ある小売店において、来月の日時売上はどの程度か予測します。広告予算をあと10%増加させたときに、どの程度の集客が見込めるかどうかを予測する、という例が挙げられます。


大きく三つの役割が異常です。ビジネスにおける統計学の最初の一歩は

・正しく集計し、レポーティングする

・正しい集計が可能になれば、データに基づいた意思決定ができ、精度が上がる。

・これまでに見えてこなかった仮説が生まれる

ということです。


少し例を挙げて説明して参ります。

あなたは新商品を企画するマーケティングマネージャーです。先日行われた新商品に関する購入意向アンケートの結果を部下より受け取りました。

結果は以下のとおりです。

商品Aと商品Bの購入意向の平均点は同率であり、このアンケートからどちらの商品のプロジェクトを進めるべきかは決められないと考える。

・商品Aと商品Bの購入意向平均点数はどちらも3.5

あなたはこれをどのように解釈しますか?

 何か大きな問題があるとは考えにくいかもしれませんが、実は大きい問題を抱えているレポートになります。


実は、実際は

・商品Aの各点数が「3」と「4」ばかり

・商品Bの各点数が「1」と「7」ばかり

というデータだったのです。そういった場合でも平均点は同じ「3.5」になります。

これを同程度の購入意向だったと評価して良いのでしょうか?ポイントとしては、平均点同じですがばらつきが違う、というところです。 


実は、このばらつきを正しく集計結果としてレポートに反映できてないというのは大きい問題です。集計を単純に平均を取ることだと考えている方も少なからずいるかもしれませんが、そうしてしまうと情報量が減ってしまうのです。平均を出した結果、そのばらつきの情報は消えているということですので、正しく集計できないと本来見るべきだった情報が抜けてしまうというのが、集計の怖さです。 

データが持つ特性というのは、統計学ではデータの分布という風に言うことができます。分布とは、どういう風にデータがばらついているのかを可視化したり、数字に置き換えたりするものです。ここではグラフにしています。先程よりも「ばらつき」が一目瞭然です。


何が言いたいかと言うと、商品Bは購入意向が非常に高い場合と低い場合があり、両極端な二つのグループに分けられるのではないか、という新たな仮説が生まれてくるということです。

先ほどの部下からもらったレポートは、誤解を生むだけで非常に紛らわしいということになってしまいます。

なので本来報告してほしかった内容としては、グラフを添付してもらい、商品Bには極端に刺さる、受けがいい、購入意欲が高い消費者がいる可能性がある。それらのグループというのをもう1回洗い直して、カメラにターゲティングすることで良い商品が生まれるのでは、という結論を出してもらうと、次のアクションに繋がりやすいと言えるということになります。


以上の例では、単純に平均を出すことの恐ろしさ、本来見るべきだった情報が削ぎ落とされてしまっているというところをお見せしました。ビジネス計画におけるゴールは、

・テータを入手したときに、どのような集計・分析を行うべきかを検討できる

・伝えるべき数値が何かを理解でき、コミュニケーションできる

・データを用いて意思決定を支援できる

ということです。

以上で「ビジネス統計学の狙い」を終わりたいと思います


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